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新たな鑑賞体験を提供する音声ガイドアプリ

美術展の世界観を引き立てるガイダンス

多くの美術展では、展示作品付近の壁や作品を囲うショーケースに、説明文や写真、音声ガイド機器用の対象番号などが表示されていますが、それらが作品や空間に対して想定以上に干渉してしまうこともあります。今回の美術展では、通常は展示作品付近に配置される物理的な説明文等を極力排除し、会場全体の照明を暗くして作品のみを照らすことで、作品をより一層際立たせる演出が施されました。そしてガイドにおいては、展示空間を阻害せず、会場を進むにつれて空間と呼応する形で必要な情報が提供されるような仕組みを志向しました。 現代美術で多くの実績を重ねてきたTHE EUGENE Studio様が発案したことにより、従来の音声ガイドとは全く異なる媒体を生み出すことが出来ました。

新たな鑑賞体験を叶えた音声ガイドの仕組み

本美術展では、解説対象の作品毎にビーコンを設置し、鑑賞者にはアプリが予めインストールされている専用端末を持ってご参加いただきました。鑑賞者が対象作品に近づいた際には、ビーコンが発信する電波をアプリが受信し、作品の情報（音声・テキスト・画像・動画）を表示するように開発しました。
ビーコンの電波特性上、対象作品が位置する場所以外にも電波が飛んでしまうことがあるため、一般的には特定の場所に紐付かせた反応などが困難ですが、アプリ側の独自プログラムによる制御によって、複雑で自由度の高い演出を実現することができました。この独自のプログラム制御は、本システムの発案者であるTHE EUGENE Studio様と共同で特許を取得しています。（特許出願中）

アプリ開発の工夫

・当社の知見を生かし、展示空間内のユーザー動線に沿ってビーコンが期待通りの反応をするように設置・検証を実施行いました。

・会場内混雑時等によるアプリの通信状況の悪化を考慮し、アプリで表示する作品情報を事前にアプリ内にダウンロードしておくことでスタンドアローンでも作品情報を閲覧できる工夫も施しました。アプリ内にダウンロードする仕組みはAWSを活用し、テンプレート化することで、コンテンツの更新作業を簡便化しています。

・会場の出口付近に設置された専用端末の回収ボックスに、ビーコンを設置しておき、端末を自動的に初期モードに戻す仕組みを用意しました。これにより、次の鑑賞者へ渡す前の初期化作業を削減し、運営スタッフの負担を軽減することに成功しました。

テックファームのソリューション

本音声ガイドアプリは、テックファームが提供するビーコン「TF Beacon」とIoTプラットフォーム「MoL（Monitoring of Location）」を用いて開発しています。「TF Beacon」は、電波強度の変更や電波の発信/受信の制御、電池残量の確認、ビーコンの電波発信状況の確認等を遠隔で実行できるため、ビーコン設置後に何度もチューニングやメンテナンスをすることができない環境に適しています。